大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)127号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 本願発明の明細書と図面によると、本願発明の明細書の「特許請求の範囲」の項には「申請物件は全体を紙製品とする。前部用を径八粍長さ四糎後部用を径6.5粍長さ三糎を作り八粍径の一端に6.5粍径を一糎差込み八粍径三糎残し、6.5粍径は二糎を後口にする全長を六糎とした物を期節に応じた着色しパラピンロー曳きして全体を固めた紙筒を作る。筒内側八粍径の尖部を1.5糎空間となる様巾一糎厚さ五粍の綿芯を入れる。6.5粍内側には巾七粍厚さ四粍の綿芯を二糎入れて吸口側とする煙草用ニコチン除け紙パイプである。」と記載され、その「発明の詳細な説明」の項には、本願発明の目的は、煙草のニコチンの害を最小限度にするものであるが、その他に実用上の効果として、紙製であるため携帯に便で、口にして口重りがなく、煙草と切り離れたパイプの感じがなく、十本以上の使用が可能で、使用不能になれば取り替えることができ、安価であるとの趣旨の記載があることが認められ、これらの記載を総合すると、本願発明の要旨は特許請求の範囲に記載されたとおりの二層式衛生パイプの構造と認めることができる。

三 右認定の本願発明の目的、効果および発明の要旨を基礎とし、原告主張の違法事由について以下判断することとする。

(一) 第一引用例の実用新案公報によると、第一引用例は、本願発明の特許出願前の昭和三四年八月二九日の出願公告にかかり、その考案の構成は、耐熱性物質の短円筒1の一端開口部に綿3を嵌入せる透明塩化ビニール管2を嵌合してなる吸煙用パイプの構造であると認められるところ、原告は第一引用例の綿芯は必ず詰まり、芯を取り替える際の抜き差しが面倒であり、また、詰まつた塩化ビニール筒を路上に捨てると歩行者が迷惑する等の欠点があり、この点本願発明と作用効果が異なる旨主張するから考えるに、前段認定の第一引用例の構造と本願発明の前記認定の構造とを対比した場合に、第一引用例の方が詰まり易いと認めることはできない。また、第二引用例の実用新案公報によると、第二引用例は本願発明の特許出願し昭和三二年一〇月二八日出願公布されたもので、紙筒製吸口体の内部にニコチン吸収体を収納したニコチン阻止吸口の構造であり、この公知例に照らし、本願発明においてパイプの材質を紙とした点に発明を認めることができないから、本願発明が紙製であることに基づく原告主張の効果は特段の効果とはいいえず、したがつて、右原告の主張は理由がないものというほかない。

(二) 次に、原告は第二引用例と本願発明と構成が異なることを主張するが、前記認定したところから明らかなとおり、審決が第二引用例のニコチン阻止吸口を引用したのは、それがニコチン吸収体を収納する材料として紙筒製吸口体を使用しており、本願発明がパイプの材質を紙にした点には発明が存しないことを示す公知例としてであるから、右以外の構成に両者相違するところがあつても、何ら審決を違法ならしめるものでなく、原告の右主張は採用するに由ないものである。

(三) さらに、原告に本願発明と第三引用例との相違点を種々主張するけれども、前記認定のとおり、審決は第三引用例を、パイプ内部の二箇所にニコチン吸収体を収納する構造の公知例として引用したものであり、第三引用例の英国特許公報(一九六〇年五月一一日公告)によると、第三引用例には審決の引用の趣旨と同一の構造が示され、この点の技術思想は本願発明と同一と認めることができるから、右原告の主張は採用する余地のない主張といわざるをえない。なお、原告は本願発明の綿芯はミシンを通し、芯の変化を防止する構成であるというけれども、この点については明細書に何ら記載されていないところであるし、その他パイプを着色する点は一般に行なわれているところであるから、この点に発明性を認めることはできず、いずれも理由がないものというべきである。

四 以上の次第で、原告の主張はすべて理由がなく、本願発明は前記各引用例に基づき当業者が容易に発明しうるものと認められ、本件審決には何ら違法の点はないから、その取消しを求める原告の本訴請求は失当として棄却す……る。

(柳川真佐夫 武居二郎 楠賢二)

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